背景色
文字サイズ標準

釜石医師会報

No.367 令和5年8月号

白馬鑓ヶ岳

白馬大池を後にして雷鳥坂を登り切ると、船越の頭(かしら)にたどり着く。すると突然視界が開けて北アルプス後立山連峰の全容が見わたせるのだ。周りでは歓声も湧き上がり、遠くは笠ヶ岳や槍ヶ岳、近くには白馬三山の一つ白馬鑓ヶ岳がその威容を見せつけるのだ。さあ白馬岳まで指呼の距離、ここからは心踊る稜線漫歩、至福のひと時である。

平野内科医院 平野 春人

巻頭言

外来の主役は患者さんとご家族 ~認知症な日々、笑いのある外来一コマ~
はまと神経内科クリニック 濱登 文寿

 先日、高齢の認知症患者さんが奥様と来院された。私「体調はいかがですか?」奥様「同じことばかり言って、頭がのぼせそうです。」私「それは大変ですね、少し距離を置くのが良いかもしれないので、デイサービスを利用されてみたらどうですか。」奥様「昔から人前で喋らない人だったので、行きたがりません。」私「そうですか、それで、どんなことを話すんですか?」奥様「それがね、先生。母ちゃん、好きだよ、愛してるよって、朝から晩まで。本当にのぼせてきます。」患者さん「ねえっ、先生。好きだよって言われて、気分が悪い人はいねーがすか」。
 患者さんの一言に、診察室は笑いの渦。笑いとユーモアのある外来はやっていて楽しい。さすがの私も一本取られた気分になり噴き出してしまった。人は生きてきたように衰えていくと言うが、患者さんのこれまでの歩みや人柄を垣間見たような気がして元気をいただいた。高齢の方が人前で「愛してるよ!」とはなかなか話せないと思う。私の話しも弾む「○○さんはロマンチストですね。」患者さん「先生も無理しないようにね。」頭が下がる。患者さんの方が一枚も二枚も上手、人生の先輩から教わることは多い。
 7月6日、アルツハイマー病の新薬、レカネマブがFDAで承認され、日本での使用も現実味を増してきた。50〜90歳の早期アルツハイマー病の患者さん1,795人を、実薬群898人、偽薬群897人に振り分け、18ケ月後のCDR-SB(認知症の評価スケール、0~18点で点数が高いほど認知症状が強い)を評価。開始前のスコアは両群ともに3.2点、18ケ月後、実薬群では1.21点、偽薬群では1.66点「両群共に悪化」したが、その差が0.45点あり相対的に27.1%(0.45/1.66点)の抑制効果(P<0.001)があったというものだが、年間350万円かかる2週間に1回の点滴治療で、果たして患者さんやご家族はその効果を実感出来るのだろうか。  AI、チャットGPT、デジタルへの変換は時代の流れ。致しかたないように思うが、高齢の方でも使いこなせるようなデジタル社会は作れないものだろうか。同時に、目まぐるしく変化する時代だからこそ、いつも変わらぬ普遍的なものやことを大切にしたいと感じている。外来ではいつも患者さんとご家族が主役。認知症になってもいいじゃないですか。笑顔があり「母ちゃん、好きだよ、愛してるよ。」と話せれば大丈夫。「母ちゃんじゃなければ、父ちゃんでもOK」。これからも患者さんやご家族に寄り添いながら一緒に考えていこうと思う。  さて、趣味の登山はシーズン真っ盛り。自然には人智を越えたものがあるが、明日も肩肘張らずぼちぼち歩こう。

(C) Kamaishi Medical Association All rights reserved.