当院では毎年、前庭を中心にイルミネーションを飾るのが恒例になっています。その写真を撮影するのも、恒例になっていますが、ただ撮っていてもつまらないので、雪が降って灯りが映える時を狙って撮影します。しかしそんなタイミングは、夜も更けて、日付が変わってからのことが多いので、地の利を生かして、独り占めして撮影し、楽しんでおります。
国立釜石病院 土肥 守
先日神戸から親戚夫婦が子供を連れて訪ねてきた。大槌での夕食のため釜石のホテルに迎えに行き、車中いろいろなことを話していた。そして大槌の街に入った頃、彼らが沈黙した。さらに大槌の街が良く見える城山に登ってみたが、従妹である母親は言葉少なげに眼に涙を浮かべていた。彼女は幼少期を大槌で暮らし、小学校の頃は夏休みになると泊まって遊んでいった。その思い出が消失していたからだろう。眼下に広がるのは土盛りされた区画の連続だけなのだ。大槌に降り立ったことがない人なら、ここに街が存在したということさえ想像できないと思う。工事車両が行きかうだけで、人間の生活の営みも見られない。これが過酷な津波被害が作り出した空間だ。
そしていまだに約4000人余りの方々が仮設住宅に暮らしている。また学童の約40%が仮設住宅から、やはり仮設の小中一貫校に通学している。学習環境、運動環境など基本的な教育基盤も極めて足りていない。これでは町の人口が流出するのは当然であろう。
復興の基本は仮設住宅生活の解消と思っている。「我が家」が欲しいのは皆が切望する思いである。しかし現実は厳しい。なぜなら仮設住宅生活の解消には、①町内に自分で土地を確保して家を建てるか?②やはり自分で町外に土地を求めて家を建てるか?③ようやく入所できるようになった災害公営住宅に入居するか?④分譲され始めた防災集団移転事業に係る宅地(防集宅地)の抽選に当選するか?⑤区画整理事業で決定した、震災前の自分の土地に家を建てるか?の選択を決めなくてはならないからだ。④の造成は進まず、⑤の土盛りの区画に至っては、平成27年下半期が最も早く供用開始となるもののごく一部で、その多くは平成28年上半期あるいは下半期となっている。
衣食住が足りてこそ人々は働き、楽しみ、生きることができる。明るい未来が見えることで希望は生まれる。自然への畏怖は忘れていないが、自然が我々に与えた命題の解決はあまりにも難しい。